「夏休みは時間があるから、きっと上手くなるはず」
そう思って迎えた夏休みなのに、気づけば9月の合奏で「あれ、思ったより変わってないな」と感じたことはありませんか?
時間はあったはずなのに、なぜか差がつかない。
むしろ、周りの方が上手くなっているように見える——。
実はこれ、決して珍しいことではありません。
毎年、多くの打楽器パートの生徒が同じところでつまずいています。
今回は、打楽器奏者として、そして指導の現場で多くの生徒を見てきた立場から、「夏休みに何をすべきか」「どう考えて練習計画を立てればいいか」をお伝えします!
「時間があるのに上達しない」には理由がある
夏休みは練習時間が一気に増えます。
だからこそ「量をこなせば上達する」と思いがちなのですが、実際には、時間の使い方によって夏休み明けの実力差は驚くほど開きます。
現場でよく見かけるのは、次の3つのパターンです。
パターン1:何を練習すべきか決めずに、その日の気分で練習してしまう
「今日はスネアの気分だから」
「なんとなく好きな曲のフレーズを叩こう」
——悪いことではありませんが、これを1ヶ月続けると、得意なことばかりが伸びて、苦手なことはそのまま夏休みが終わります。
計画がないと、練習の「量」はこなせても、実力の「伸びしろ」がある部分に手をつけられないまま時間だけが過ぎていきます。
パターン2:苦手な基礎を避けて、得意な曲ばかり練習してしまう
これは実はとても自然な心理です。
苦手な練習は、「できない自分」と向き合う時間になるので、どうしても後回しにしがちです。
逆に、得意な曲やフレーズは弾いていて楽しいので、つい時間を使ってしまう。
結果として、夏休みが終わる頃には「得意なことはさらに得意に、苦手なことは苦手なまま」という状態になります。
パターン3:一人で黙々と練習して、フォームの間違いに気づけないまま終わる
夏休みは自主練の時間が増える分、一人で練習する時間も長くなります。
ここで見落とされがちなのが、フォーム(バチの持ち方、腕の使い方、身体の向きなど)です。
間違ったフォームのまま繰り返し練習してしまうと、その「間違ったやり方」自体が上達し、9月になって直そうとした時にはかなり時間がかかってしまいます。
本人は「頑張っている」つもりでも、方向性そのものがズレていることに気づけません。
なぜこの3つが起きてしまうのか
打楽器は、管楽器のように「音が出ない」という分かりやすい壁にぶつかりにくいです。叩けば音は出ます。
だからこそ、「できているつもり」になりやすく、自分の課題に自分で気づくのが難しいという特性があります。
さらに、夏休みは部活の先生や先輩からの直接的なフィードバックを受ける機会が普段より減ります。合奏がない日、パート練習に指導者がつかない日も増えるでしょう。
つまり、自分の練習を客観的にチェックしてくれる目が、一番少なくなる時期でもあるのです。
「時間はあるのに、チェックする人がいない」——これが、夏休みに差がつく最大の理由です。
夏休みの練習計画、こう考えるとうまくいく
では、どう計画を立てればいいのでしょうか?
難しく考える必要はありません。ポイントは3つです!
① 1週間の中に「苦手を優先する時間」を先に確保する
好きな練習からではなく、苦手な基礎練習から1週間のスケジュールに書き込みましょう。得意な曲の練習は、その後に組めば大丈夫です。順番を変えるだけで、苦手だったことが夏休み明けには「できること」に変わります!
② 週替わりでテーマを決める
「今週は譜読み強化週間」「来週はダブルストローク」というように、1〜2週間ごとにテーマを絞ると、漠然とした練習にならず、達成感も得やすくなります!
③ 週に1回、自分の練習を映像で見返す日を作る
一人で練習する時間が長くなる夏休みだからこそ、自分のフォームを撮影して見返す習慣を持つことが大切です!自分では気づけないクセも、映像を通すと見えてくることがあります!
それでも判断が難しい部分は、専門的な視点でのチェックがあると安心です。
夏休みだからこそ取り組みたい、5つのこと
上記の3つは「考え方」の話でしたが、ここからは具体的に何に取り組むべきかを紹介します!
どれも、合奏や曲練習に追われる普段の部活では後回しになりがちなことばかりです。
① 他の打楽器の基礎練習に取り組む
スティックばかり、マリンバばかりになっていませんか?
夏休みは、普段あまり触れられていない楽器の基礎に時間を使う絶好の機会です。編成によっては兼任が必要になる場面も多く、複数の楽器に基礎から触れておくことは、9月以降の対応力に直結します。
まずはスティックと鍵盤打楽器、2種類の基礎練習に取り組む習慣をつけましょう!
② ソロ曲やアンサンブル曲に挑戦する
合奏の曲練習が一旦落ち着く夏休みは、自分だけの曲にじっくり向き合える貴重な期間です。
ソロやアンサンブルの曲は、合奏の中では見えにくい自分の技術や表現力の課題をはっきりさせてくれます。
アンサンブルコンテストを見据えている人には、特におすすめです!
③ 次の大会に向けた目標を立てる
「なんとなく上手くなりたい」ではなく、「次の大会で自分のパートをミスなく演奏する」というように、具体的な目標を立てましょう!
目標が明確になるほど、「どうすれば目標を達成できるか」と、練習の選び方も変わってきます!
④ プロ奏者の演奏を聴き込む・研究する
普段は練習に追われて後回しになりがちな「聴く」時間も、夏休みならまとめて確保できます!
プロの演奏を聴き込むことで、自分が目指すべき音のイメージが具体的になり、練習の質そのものが変わってきます!
⑤ 楽典の復習をする
リズムの数え方、拍子の感じ方、記号の意味など、曲の中では流してしまいがちな楽典的な知識も、夏休みに一度整理しておくと、今後の合奏での理解度が変わってきます!
「なんとなく叩けている」を「理解した上で叩けている」に変えておくと、複雑なリズムや変拍子に出会った時にも対応しやすくなります。
楽典の復習に、クイズアプリに挑戦してみてください!

⑤ 楽器や備品を整理する
スティックやマレットの状態、ケースの中身、譜面の整理など、普段は後回しになりがちな身の回りの整理も、時間のある夏休みにこそやっておきたいことです。
道具が整っていると、9月からの練習にも気持ちよく取り組めます!
正しく夏休みを使えると、何が変わるか
計画を立てて練習した生徒とそうでない生徒とでは、夏休み明けの合奏での立ち位置がはっきり変わります。
苦手だった基礎が「できること」に変わっているだけで、パート内での自信も、周りからの見え方も変わってきます。
コンクール後の新体制、あるいはアンサンブルコンテストに向けても、この夏の使い方が土台になります!
一人で抱え込まなくて大丈夫
とはいえ、「自分のフォームが正しいのか」「今のやり方で本当に合っているのか」は、自分一人ではなかなか判断がつかないものです。
それは、あなたの努力が足りないからではありません。
打楽器は、客観的にチェックしてくれる存在がいるかどうかで、伸び方が大きく変わる楽器です。
夏休みという時間を、迷いながら過ごすのはもったいない選択です。
基礎の見直しから始めたい人も、フォームを一度きちんと見てもらいたい人も、一緒に今の練習を整理していきましょう。













