「悪くはないんだけど、なんかまとまらない。」
吹奏楽の指導をしていると、こういう感覚に陥ることがあります。
音程は合っている。テンポも大きく崩れていない。でも、何かが足りない。
その「何か」の正体が、打楽器にあることは少なくありません。
あるホール練習での話
以前、ある高校の吹奏楽部のホール練習を見学したときのことです。
打楽器パートは、楽譜通りに演奏できていました。リズムも大きく外れていません。
でも、演奏全体としては何かが噛み合っていない。
生徒も先生も「悪くはないけど、もっと良くなるかもしれない」と感じている状態でした。
私はその場で、打楽器の音量バランスに着目しました。
打楽器の「当たり前」が、演奏を崩している
打楽器の生徒は、楽譜に書かれた強弱記号(f、p、cresc.など)を見て演奏します。当然です。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
楽譜の強弱記号は、演奏者主観の絶対的な音量ではありません。
打楽器は、自分の目の前で鳴らす音と、客席に届く音のイメージにズレが生じやすい楽器です。
学生は特に、指揮者に指摘されて初めて、自分たちが演奏している音量を自覚します。
さらに、打楽器の中でも楽器によって特性が異なります。
- 低音楽器(バスドラム・ティンパニ):音が広がるまでに時間がかかるため、客席では聴こえにくい
- 高音楽器(シンバルなど):音が鋭く遠くまで届くため、客席では聴こえやすい
この特性を知らないまま、全員が楽譜の指示通りに演奏すると、客席では「高音だけが突出して、低音が聴こえない」状態になります。
そして、低音が聴こえないと、リズムの基盤が崩れます。
管楽器の奏者は、打楽器のリズムの拠り所にしているので、それが聴こえなければ、無意識のうちに演奏がバラつき始める。
「縦が合わない」「なんかまとまらない」という感覚の正体は、ここにあることが多いのです。
打楽器を整えると、何が変わるか
あのホール練習で、私は生徒にこう伝えました。
- 演奏する音量のバランスは、客席で聴いた全体の音量を基準に考えること
- 低音楽器はスピード感を持って演奏することで、音の立ち上がりを改善する
- 高音楽器は全体的に音量を抑え、クレッシェンドは低音楽器の後に行う
これだけのことを伝えた結果、演奏は変わりました。
聴こえてこなかったリズムが聴こえるようになり、管楽器が演奏しやすくなった。
高音楽器の音量が落ち着いて、メリハリが生まれた。
打楽器が「ただ演奏しているだけ」の状態から、曲を作るうえで必要不可欠な存在になったのです。
指導者が知っておくべきこと
「打楽器の強弱記号は相対的なもので、バンドの規模や特性によって最適な音量が変わる」
これは、打楽器の専門教育を受けた人間でなければ、なかなか気づけません。
打楽器の生徒自身も、誰かに教わる機会がなければ、ずっと知らないまま演奏し続けます。
それは責める話ではなく、ごく自然な状態です。
だからこそ、指導者側がこの視点を持っておくことが重要になります。
「なんかまとまらない」と感じたとき、管楽器の音程や奏法を見直す前に、一度打楽器の音量バランスに目を向けてみてください。
打楽器が変わるだけで、バンド全体の演奏が見違えるように変わることがあります。
打楽器の指導、一人で抱えなくていい
とはいえ、打楽器の専門的な指導は、専門知識なしには難しい領域です。
どこに問題があるのか、何から手をつければいいのか、判断するだけでも相当な経験が必要です。
もし「うちの打楽器、実は問題があるのかもしれない」と感じたら、一度オンラインで相談してみませんか。
現状をお聞きするだけでも、問題の原因と解決策をお伝えできます。
演奏を聴かなくても、状況の説明だけでアドバイスできることも多いです。
打楽器の指導を、一人で抱え込まなくていい。
そのための相談窓口として、ご活用ください。





